戯れ言(あるいは呪詛)の置き場

映画、アニメ、小説へのつらつら

2020年ベスト「映画」について(前編)

どうも改めまして、こんにちは&こんばんは。
グラビトン・ボルト(侵略者)です。
何分ブログを綴るというのは初めての試みなので
不慣れ&読み辛い所も多々あるかもしれませんがどうかご容赦!
以下、タメ口となります!

第1発目となる今回はいちいち呟く気にならなかった2020映画ベスト10の面白かった所、興味深かった所について連ねていければと思ってる。
試しに打ってみたら長くなったので5本ずつの
前後半で行かせて貰いまする。

では、以下がベスト。

1 ブルータルジャスティ
2 海辺のエトランゼ
3 劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ!
4 おらおらでひとりいぐも
5 ランボー ラストブラッド
6 影裏
7 無頼
8 透明人間
9 劇場版 仮面ライダーゼロワン
10 魔女見習いをさがして

今年観れた新作映画は計44本。
せめて50は越えたかったのですが、このご時世だと中々難しいな・・・。

じゃあ、いよいよ個々の所感を。

1 「ブルータルジャスティス」
(S・クレイグ・ザラー監督)

前々から「メル・ギブソンがドキツいバイオレンス映画を投げ込んでくる」予定そのものは見聞きしていたのでそれなりに期待はしていたのだが、見事にホームランを打ってくれたというか。
特に今回は、近場のシネコンでミニマムなアクション新作が公開されるパターンが乏しかったので
(例えばイコライザーコレット・セラのような)
アクションがあるだけで打点高めというのもある。

今作は
「時間の引き伸ばしと切断」
「ロケーションの無機質さ」
上記の2点が特に好きだったな。
前者の美点はメル・ギブソンとヴィンス・ボーン演じる主要二人が飲み食いをしながら張り込むシーンで存分に味わえる。
ヴィンス・ボーンがサンドイッチを食らいながら
もぞもぞと何を取り出すかと思いきや、塩をかけ出して、メルギブがそれをとんでもなくイヤそ〜な面で見守る。
このニュアンスギャグをしっかり1カメの軽い長回しで納める為に、「朝〜晩の時制の変化」等はすんなりカットされる。
キャラに愛着を持たせる為の時間と、切断すべき時間の取捨選択が見事だと感じた。
時に、この時間でたっぷり愛着を得たキャラクターを残忍なまでの省略で抹殺する残忍さも持っている。素敵だ。
2点目に指摘したロケーションについてはかなり驚いた。
この手の「古典的なジャンル映画を現代の映画館に掛ける作家」たち、例えばタランティーノやノーラン、マッカリーのような系譜の作家は街やセットの美術に拘り、それら込みあるいはナメのショットを充分過ぎる程にカメラに取り込み、観客を
「○◯年代」空間に誘導することである種の「豊潤さ」を担保していた(と思っている)。
けれども、このザラー監督はそこをすんなり省くというか。
メルギブの住む荒んだ街は必要以上に汚れている訳でもなく、道行く役者の身振り手振りで「荒んだムード」を表すに留まっているように思う。
必要以上に散らばっていたり、臭そうだったりしない(この辺りは韓国映画が巧い印象)。
残虐な銀行強盗と撃ち合うロケーションも凄い。
彼ら自身の車両があって、それらが必要最低限の遮蔽物となるだけで、それ以外に目を惹く要素が用意されていない。
この点を考えると、「ザラーは背景を持ったキャラクターを正確に演じられる役者がカメラに納まっていれば、そこが映画的な空間となる」
みたいに考えているのではなかろうか?
このポイントがあるお陰で我々観客は、時代から完全に取り残された哀れなデカ二人の末路を、
その片割れたるヴィンス・ボーンの投げる警察バッチの美しい放物線を、死に際の銀行員が取り出すあの靴下の震えを、いつまでも頭に刻み込めておけるんだ。
誠に傑作であった。

2 「海辺のエトランゼ」
(大橋明代監督)
マイフェイバリット漫画&アニメである
宝石の国」単行本1巻記念PVも作った大橋監督の映画デビュー作。
とても綺麗だった・・・・!
というのはポスターアートを見た段階で用意出来た感想なんだけれども、このアニメはとにかく
「初恋の焦燥」を息苦しいまでにスクリーンに刻み込むことが出来ていた。
特に冒頭、実央に駿が一目惚れするショットの連鎖、実央に降り注ぐ街灯のスポットライトのような美しさには息を呑む。
以降、二人の情動の高まりに応じてカットのリズムが早くなっていくので、テンションが途切れることは一切なかった。
あと、愛する者同士の正面切り返しショットを挟むタイミングに注目!
俺の記憶が正しければ桜子という駿の幼馴染絡みの一連で挟まれる切り返しが凄かった。
あれは「ふとした瞬間に傷付けた愛しいアイツの顔が浮かぶ」という、恋や愛に生きている人間のフラッシュバックを疑似体験させてくれる。
ときめきの塊。素敵。

3 劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ!
(三池崇史監督)
久しぶりにスクリーンで三池映画!
しかも2本!流石早撮り!ということで、
「初恋」と連射してきた三池監督だけども俺は
敢えてでも何でもなく、誠心誠意「ファントミ」を推すぜ。
悪役を撃退する冒頭、実際現場で急に雨が降ったように見えるレベルで唐突に傘を広げる凄まじい編集リズム、「黒沢清は許可したんか?」というネーミングのキャラクター黒沢「ピヨシ」の豪華さ、
そして彼が落ち込む場面の浴槽の撮り方に注目して欲しい。
特に後者は「自信を喪失した人物が恐る恐る目線を上げる」感触を体感させてくれる素晴らしいショットだったし、これによってどんなにチープな作品でも一気に求心力が上がる。
三池崇史はどんなに厳しい企画でも、こういう
「観客全員が目を反らさない為に絶対必要なショット」を必ず用意する。
十三人の刺客」における両手両足切断は謂わずもがな、若干批判が多かった「ジョジョ」における屋敷を捉えたショットの堂々たる「悪魔のいけにえ」ぶりにしたってそうした勝負ショットの一端だ。
そして、この「ファントミ」は上記したショットをモノにする為に活動するスタッフへの礼賛としても機能する。素晴らしい。撮影所映画としても
「カツベン」辺りと比較したら愉しいかも?

4 おらおらでひとりいぐも
(沖田修一監督)
正直、これに関してはあんまり言葉にするパワーがないのだけれども「独りで生きていく」ことをここまで丹念に撮っている映画はこれだけだったのでは?
冒頭の田中裕子が座敷空間の広がりに合わせて踊り狂う様を室内〜室外から撮ったショットの温度差に思わず身震いした。
そして、墓参りのシーンよ。
あそこでフレームインしてくる掌には思わず落雷してしまったわ。
俺達は、みんないつか独りになる。
それでも、何かが背を押してくれるのだとしたら・・・と日常の合間に時々考えることをそのまま映像にしたようなショットだった。

5 ランボー ラストブラッド
(エイドリアン・グランバー監督)
これ、アクション&リベンジ映画としてはかなりの奇形で、娘(実子ではない辺りも無駄に複雑)を連れ戻しにいった先ですぐ決着が付くような映画にはなっていない。
故に混乱した後味が強く残る作品なのだけれども、
地獄を再現したような穴蔵空間にひたすらダブル・タップの悲鳴が響き渡る様はどうしたって鮮烈だし、身内を家から立ち去らせてから急ピッチで
処刑ステージを用意する編集のリズム、特にペンで地図に印を付ける動作の異様な速さには戦慄した。
アクション映画なのにゴアホラーで、シレっと揺り椅子に座るだけで「俺、西部劇なんだよね」と映画史に居座ろうとする豪胆さ。
ランボー、いやスタローン!あんた何者だよ!

以下、後編に続く!