戯れ言(あるいは呪詛)の置き場

映画、アニメ、小説へのつらつら

TVアニメ「キャプテン・アース」を観たぜ!という話

みなさんこんにちは&こんばんは

グラビトン・ボルト(侵略者)です。

 

今年の1/1に2020年ベスト映画の件でスタートし、

キャプテン・アースの感想纏めたいぜ!」とか言ってたのに時間が掛かってしまいました・・・。

仕事の休憩中にたまたま弾みで触れた「少女革命ウテナ」が滅茶苦茶面白くて、

その後流れで観た「ホスト部」なんてもうベスト級に素敵だったし、

さらに、さらに!「STAR DRIVER輝きのタクト」も瑞々しくってもう・・・

堪らん!!!となったので本作に触れないのはあり得なかったわけですが

以下つらつらと感想を出していければと思います。

 

もうこんな文面を覗きにくる方々は1度はキャプテン・アースを観ているでしょうから

あらすじの説明は省き、触れたいポイントの話だけをさせて頂きますわ!

 

◎とにかく画面のレイアウトがカッコ良い!

これ、すっごく表面的な感想なんですけども、

平場のドラマパートのレイアウトがとても雄弁なアニメじゃないですかこれは?

代表的な所を挙げると1話の冒頭で主人公・真夏ダイチが叔父さんと学校の三者面談を受けるシーンなんか特に顕著で、俯瞰視点のショットに切替わると教室の窓枠の影が

グラフィカルに教室全体に延びて、ダイチから他の二者を区切ってしまっているショットがあるんですよ。

真夏ダイチという少年は、アースエンジンに乗り込んで以降、どんどん

「陽」の方向に振り切っていくキャラクターなので逆に1話の端々で挟まれる内向的なショットが2クール間ずっとその後の彼のテンションとの違和感で頭に残り続ける訳です。(そして23話で反響する)

その他にもダイチと同じく地球を守る「魔法少女」こと夜祭アカリの他のキャラクターと接する時の距離感を捉えたショット(特に20話のプールのシーン!いつもポップなアカリのイメージからは若干解離したリアクションとショットがありますよね!もちろんテッペイとのキスシーンも凄い訳ですが!)

他にもアイドルと人類を侵略する「遊星歯車装置」の二役をこなすアイアタルの変化を提示する9話のライトアップされたステージと夜景の反復や、

第14話「夜をつらぬく少女の涙」なんて、「涙は下に流れていくものである」

というイメージを逆手にとって視線を上に向けていくショット構成が垂涎モノでした。

1話や最終回の「地球を守るキャプテンアース」というヒロイズムをワンショットで提示する、地球をバックにしたショットも完璧だったな・・・カッコイイ!

もちろん上記でピックアップした話数やシーン以外でも堅実かつドラマを牽引する画面演出が多々あるので興味が尽きることはありません。

毎話達成される目的や、覚醒する「遊星歯車装置」のパーソナリティに合わせて画面が構成されているんですよね。

少年少女の内面に合わせたヴィヴットな画面が提示されること。

こういったアニメの大きな見どころなのではと感じました。

 

バンクシーンがカッコイイ!

「キャプテンアースのバンクがカッコイイということは全人類知っていること」だとは思いますが、それでもバンク「だけカッコイイ」などという意見も蔓延っているように感じたのであえて言わせて頂きます。

あのカッコイイバンクは上記したキレのある画面で根気強く語られるドラマ抜きには正立し得ないものなのです。

個人的に感じるこのバンクのキモは「真夏ダイチの操作だけでは成立しない」所にあると思います。

アースエンジンインパクターの変形は、大人の操る衛星と完璧に連動しないと

成立しないものなのです。

覚醒前の「遊星歯車装置」の面々と関わる事でより明確になる真夏ダイチらの内面の煌めきと、「地球を守る」という大義的な理由が一致するとき、

衛星の軌道はエクスパンドの配置に向けて動きだし、ロケットが射出するショットへ繋がるのです。

これは上述した榎戸&五十嵐両名による前作「STAR DRIVER輝きのタクト」で銀河美少年であるツナシ・タクトが発する「やりたいこととやるべきことが一致するとき、世界の声が聞こえる!」をロボットアニメ定番のバンクシークエンスに置き換えたものとも言えます。

前作でセリフに起こしていたテーマを次作で映像に落とし込む。

こうした作家性の発展を観られるのも作家でものを観る面白さの醍醐味ですよね。

あと、バンクシーンの話をするなら夢塔ハナが初めて戦場に出る

19話「フレアの閃光」の話をしなくては、とんだフェイク野郎だと思いますので

触れておきます。

この話数では、これまで守られる対象としての側面が強かった夢塔ハナがいよいよ

フレアエンジンで戦うエピソードなんですが、

ダイチのアースエンジン、テッペイのネビュラエンジンとショットの構成がかすかに、

けれど確実に違っているのです!

ライブラスターの撃鉄を上げるショットから始まって、ファーストエクスパンドのシーンは他のインパクターと違って正面から捉えられていますよね?

他のインパクターは合体時に顔が変形する瞬間を正面から撮っているのですが、

このフレアエンジンの合体シーンは他の2機と違い、バンク序盤で明確にカメラが

ロボットの「顔を記録する」のです。

この機体で、夢塔ハナが飛ぶのだと。

そして、他の2機ではなかったエクスパンド中にカメラがコックピット内に入って

衛星間を上昇するハナのショットが挟みこまれます。

先の文面で話した「夜をつらぬく少女の涙」で提示された上方向への導線をついに夢塔ハナがなぞっていく。

脚本の榎戸洋司さんが話数単発で参加している「ラーゼフォン」が試みていたように、

話数毎に提示されたショットやセリフが精密に反響してキャラクターをある境地へ導いていく。

2クールアニメだからこそ出来る語り口の妙に超絶カッコイイバンクシーンが乗っかっているのです。

 

榎戸洋司脚本で一番カッコイイ「人を縛るルールを壊す」が最高!

少女革命ウテナは「王子、お姫様はこうあるべき」というルールを

ホスト部は「ホストは男であるべき」というルールを

STAR DRIVERは「巫女は祈り続けるべきだ」というルールをそれぞれ破壊して、

「これまでに見たことがなかった光景」やその瞬間に視聴者を連れて行ってくれる歓びがありました。

キャプテンアースでは真夏ダイチと嵐テッペイの二者間で

「互いを驚かせたらペンダントを渡す」という「男同士でイチャイチャと!」なやりとりによって、前述した「ルールを壊す」榎戸脚本のエッセンスがスムーズに提示されます。

 

◎その上で・・・・

上記でさっくり諸々の美点を挙げさせて頂きましたが、強いて難点を出すとしたらやっぱり「ソルティドック周りの作劇が微妙」という一点だと感じました。

どこか不能感を持っていたキャラクターが「遊星歯車装置」に覚醒して主人公らと戦いを繰り広げていく前半に対して。「箱舟派」のソルティドックの面々はいくら何でも

魅力に乏しいというか・・・ソルティドックの特設部隊との闘いはどこまでいっても

他のロボットアニメに引き写しでしかなくなってしまっているし、その間キャラが確立されていた歯車装置の面々が一歩後ろに下がってしまうのは少々残念かなと。

榎戸洋司さん、ウテナを筆頭に抽象的な作劇はめちゃくちゃ上手いと思うのですが、

「文豪」3期のマフィア間の抗争など、現実の暴力や組織間の争いなどの作劇には少し疑問が残ります。

特に「文豪」はキャラクター間のカップリングありきで進んでしまう所があるので

「抗争」の血なまぐささが出ないんですよね。

キャプテンアースの場合は「箱舟派」がおっさん達なのでカップリングになることはないものの、主人公らの若さとの形式的な対比としてしか配置されていないのが・・・惜しいなと。

 

 

 

とまぁ、自分が特に言いたい感想はこのぐらいかな。

巷の評判とくらべて、自分はだいぶ楽しめたと思います。

特に「シンエヴァ」における真希波・マリ・イラストリアスの真価を見届ける前に

榎戸アニメを一通り見ることが出来たのは補助線としても最高でした。

よく「安野モヨコの分身」として定義されがちなマリだけど、絶対榎戸脚本からの旅人という側面も強いと思うんだよな・・・

愚痴はまぁこれぐらいにして、石田彰が登場する5話「星空の絵本」の傑作エピソードぶりなど、まだまだ掘り足りない「キャプテンアース」ですがこれ以上書いても

より断片的でかつ長いものにしかならなそうなので、ここまでとさせて頂きます。

転職先が決まった関係で若干時間が出来ているので、次回は「エウレカ」を観つつ

滅茶苦茶面白かった「キングゲイナー」の話出来たらなと思います。

 

2020年ベスト「映画」について(後編)

皆さんこんにちは&こんばんは。
グラビトン・ボルト(侵略者)です。

昨日勢いでスタートし、ベスト10本の感想をサッと連ねられればと思っていたのですが、
思いの外長くなってしまったので、5本ずつの前後編形式としました。

では、6位の作品からつらつらと。

6 影裏
(大友啓史監督)

正直、自分は大友啓史映画のあまり良い観客ではない。
るろ剣」の実写化は谷垣健治さんによるアクションが映えていたものの、ドラマはどうしたって鈍重、尺は長くなってしまうしで「ちょっと豪華なニチアサ」ぐらいにしか感じられなかった。
ただ、当時やたらイライラしながら見ていた
3月のライオン」に関してはTV放映で見ていると主人公たる神木隆之介が様々なタイプの
「父権」と対局するように演出・構成されており、力で圧倒するタイプの父親像を伊藤英明、知的・静的な父親像を佐々木蔵之介
超然とした、子供からは理解の及ばない憧れの大人としての父親像を加瀬亮に担わせ、彼らを丁寧にカメラに納めることで「男を綺麗に撮る」というポイントは見事に達成されていた。
なので、松田龍平綾野剛が出会い、両者の距離の伸縮を撮る「影裏」には結構期待していた。
結果として今作はとても見応えがあったと思う。
元々美形の綾野剛に「生活」を纏わせるショットの連なりがこれまでの作品からは考えられぬほどに丁寧だ。
ファーストショット、寝転ぶ綾野剛の臀部からゆっくり右にパンしていくカメラの執拗さ、尻から漂う色気と重さを見事に撮していたし
松田龍平との交流の一貫である「釣竿」をただひたすら「釣竿」として撮っている辺りが好感度大だった!
こういう、同性愛だったりある種の性愛を題材にした映画で「アイテムをただアイテムとして撮る」のは意外と難しいんですよ皆さん!!!
あの青山真治「共喰い」でさえも揺れる釣竿は
「男性器・勃起のメタファー」として何の面白みもない収まり方をしてしまっていたのは忘れ難い。
今作は松田龍平との交流の一貫として釣竿が撮されているからか、あるいは綾野剛の役柄と演技が
見せない、秘めたる色気にウェイトを置いているからかこうした「露骨に性を意識させるアイテム」や
無駄に生々しい性が画面を曇らせることなく進行してくれていた。
大友啓史であろうと、どんな作家であろうとこうした慎ましやかな秀作を撮る可能性もあるのだと強く記憶に刻んでおきたかった。
故に6位。

7 無頼
(井筒和幸監督)
これについては、正直あまり言葉を持っていない・・・というか非言語的な「ムード」を纏った映画なんだと思う。
ヤクザの日常の狭間に暴力を挟み込み、ひたすら
「何もない時間」をひたすら撮っていき、
「この画はどこに終着するのだろう?」と疑問を感じた所で、フレーム外から響くあの街の音。
あぁ、そこに引き摺られていた男の話なのだなと。
シレッとラストショットで着地して見せる辺りズルい。

8 透明人間
(リー・ワネル監督)

今年あんまり観れなかったので、ホラー映画は貴重!ホラー映画は栄養!ということで、ベストに入れない訳にはいかなかったのだ。これ、怖くて面白かったよなぁと。
冒頭、「恋人と眠るベッドから相手を起こさないように抜け出す」件からもう巧い。
主人公の台詞は「ちゃんと彼が寝ているかどうか?」を確認するのみに留めて、睡眠薬の袋、警報器のスイッチのON/OFF、など「たかだか一人の男性から逃げる為にここまで対策が必要だったのか?」と観客に違和感を抱かせ、状況の異常さを理解させる手腕が素晴らしい。
以降、「彼」が本格的に逆襲を始めるホラーパートは主人公の精神的弱点を突いてくる執拗さ、
虚空から覗かれている違和感を常に抱かせてくれる撮影と役者のリアクションが素晴らしかった。
「透明化」のネタが割れてからも、弱体化するどころか「スーツのギミック」が彼のモンスターとしてのグロテスクさを強調する。
わざわざ雨を降らせて銃撃したり、場面を派手に彩る無茶な演出も面白かった。
大好きです。

9 劇場版仮面ライダー ゼロワン
(杉原輝昭監督)

ゼロワン、やっぱ今年観といて良かったなと。
天津周りの処理で脚本の筆が鈍っていたのが明白だったから、本編の展開を語りきった後に美点であった洗練されたルック、凝ったオモチャギミックを全面展開出来る映画は全て心地よかった。
後、脚本家のSF趣味がマトリックスレボリューションズ辺りから来てることを伺える無人駅の件はニヤニヤしながら見ていた。
それに、伊藤英明と山崎紘奈の真相を提示する教会のシーン、仮想とリアルにショットで分断された愛する二人がもう一度出逢う瞬間を捉えていた。
ここは一度TV放映版で「生/死」に分断されてしまった或人とイズが同一フレームで変身する感動と対比になっている。シビれた。
ショットも、ギミックもノっていて、作劇のスピードが速い。
気持ち良い傑作だった。

10 魔女見習いをさがして
(佐藤順一監督)
前述したゼロワンと真逆で、尺の短さに対して
プロットの詰め込みっぷりがギリギリで正直
舌足らずな部分もある代物だとは思うのだが、
そこはクレジットされてる熟練&凄腕の面子ががっつりカバーする。
障害者支援学級で主人公が新たな道を見付ける瞬間、その場にある全てを肯定するかのような太陽光の演出には正直負けた。
終始強い画面が続く。
ラスト、憧れたフィクションのキャラが使う力や展開ではなく、「そのキャラクターが元々持っていた内面の美点」を魔法として再定義する。
「私たちが美しく在れるのは貴女達のお陰なんだよ!」という、フィクションからフィクションへのラブレター。
間に立つ俺達は、そこに何を見るんだろうか。
忘れ難い1本だった。

以上、30分過ぎて2021年ですが、去年のベスト後編でした!
来年は「キャプテンアース」の感想から始めて、
色々綴っていきたいぜ!よろしくぅ!

2020年ベスト「映画」について(前編)

どうも改めまして、こんにちは&こんばんは。
グラビトン・ボルト(侵略者)です。
何分ブログを綴るというのは初めての試みなので
不慣れ&読み辛い所も多々あるかもしれませんがどうかご容赦!
以下、タメ口となります!

第1発目となる今回はいちいち呟く気にならなかった2020映画ベスト10の面白かった所、興味深かった所について連ねていければと思ってる。
試しに打ってみたら長くなったので5本ずつの
前後半で行かせて貰いまする。

では、以下がベスト。

1 ブルータルジャスティ
2 海辺のエトランゼ
3 劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ!
4 おらおらでひとりいぐも
5 ランボー ラストブラッド
6 影裏
7 無頼
8 透明人間
9 劇場版 仮面ライダーゼロワン
10 魔女見習いをさがして

今年観れた新作映画は計44本。
せめて50は越えたかったのですが、このご時世だと中々難しいな・・・。

じゃあ、いよいよ個々の所感を。

1 「ブルータルジャスティス」
(S・クレイグ・ザラー監督)

前々から「メル・ギブソンがドキツいバイオレンス映画を投げ込んでくる」予定そのものは見聞きしていたのでそれなりに期待はしていたのだが、見事にホームランを打ってくれたというか。
特に今回は、近場のシネコンでミニマムなアクション新作が公開されるパターンが乏しかったので
(例えばイコライザーコレット・セラのような)
アクションがあるだけで打点高めというのもある。

今作は
「時間の引き伸ばしと切断」
「ロケーションの無機質さ」
上記の2点が特に好きだったな。
前者の美点はメル・ギブソンとヴィンス・ボーン演じる主要二人が飲み食いをしながら張り込むシーンで存分に味わえる。
ヴィンス・ボーンがサンドイッチを食らいながら
もぞもぞと何を取り出すかと思いきや、塩をかけ出して、メルギブがそれをとんでもなくイヤそ〜な面で見守る。
このニュアンスギャグをしっかり1カメの軽い長回しで納める為に、「朝〜晩の時制の変化」等はすんなりカットされる。
キャラに愛着を持たせる為の時間と、切断すべき時間の取捨選択が見事だと感じた。
時に、この時間でたっぷり愛着を得たキャラクターを残忍なまでの省略で抹殺する残忍さも持っている。素敵だ。
2点目に指摘したロケーションについてはかなり驚いた。
この手の「古典的なジャンル映画を現代の映画館に掛ける作家」たち、例えばタランティーノやノーラン、マッカリーのような系譜の作家は街やセットの美術に拘り、それら込みあるいはナメのショットを充分過ぎる程にカメラに取り込み、観客を
「○◯年代」空間に誘導することである種の「豊潤さ」を担保していた(と思っている)。
けれども、このザラー監督はそこをすんなり省くというか。
メルギブの住む荒んだ街は必要以上に汚れている訳でもなく、道行く役者の身振り手振りで「荒んだムード」を表すに留まっているように思う。
必要以上に散らばっていたり、臭そうだったりしない(この辺りは韓国映画が巧い印象)。
残虐な銀行強盗と撃ち合うロケーションも凄い。
彼ら自身の車両があって、それらが必要最低限の遮蔽物となるだけで、それ以外に目を惹く要素が用意されていない。
この点を考えると、「ザラーは背景を持ったキャラクターを正確に演じられる役者がカメラに納まっていれば、そこが映画的な空間となる」
みたいに考えているのではなかろうか?
このポイントがあるお陰で我々観客は、時代から完全に取り残された哀れなデカ二人の末路を、
その片割れたるヴィンス・ボーンの投げる警察バッチの美しい放物線を、死に際の銀行員が取り出すあの靴下の震えを、いつまでも頭に刻み込めておけるんだ。
誠に傑作であった。

2 「海辺のエトランゼ」
(大橋明代監督)
マイフェイバリット漫画&アニメである
宝石の国」単行本1巻記念PVも作った大橋監督の映画デビュー作。
とても綺麗だった・・・・!
というのはポスターアートを見た段階で用意出来た感想なんだけれども、このアニメはとにかく
「初恋の焦燥」を息苦しいまでにスクリーンに刻み込むことが出来ていた。
特に冒頭、実央に駿が一目惚れするショットの連鎖、実央に降り注ぐ街灯のスポットライトのような美しさには息を呑む。
以降、二人の情動の高まりに応じてカットのリズムが早くなっていくので、テンションが途切れることは一切なかった。
あと、愛する者同士の正面切り返しショットを挟むタイミングに注目!
俺の記憶が正しければ桜子という駿の幼馴染絡みの一連で挟まれる切り返しが凄かった。
あれは「ふとした瞬間に傷付けた愛しいアイツの顔が浮かぶ」という、恋や愛に生きている人間のフラッシュバックを疑似体験させてくれる。
ときめきの塊。素敵。

3 劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ!
(三池崇史監督)
久しぶりにスクリーンで三池映画!
しかも2本!流石早撮り!ということで、
「初恋」と連射してきた三池監督だけども俺は
敢えてでも何でもなく、誠心誠意「ファントミ」を推すぜ。
悪役を撃退する冒頭、実際現場で急に雨が降ったように見えるレベルで唐突に傘を広げる凄まじい編集リズム、「黒沢清は許可したんか?」というネーミングのキャラクター黒沢「ピヨシ」の豪華さ、
そして彼が落ち込む場面の浴槽の撮り方に注目して欲しい。
特に後者は「自信を喪失した人物が恐る恐る目線を上げる」感触を体感させてくれる素晴らしいショットだったし、これによってどんなにチープな作品でも一気に求心力が上がる。
三池崇史はどんなに厳しい企画でも、こういう
「観客全員が目を反らさない為に絶対必要なショット」を必ず用意する。
十三人の刺客」における両手両足切断は謂わずもがな、若干批判が多かった「ジョジョ」における屋敷を捉えたショットの堂々たる「悪魔のいけにえ」ぶりにしたってそうした勝負ショットの一端だ。
そして、この「ファントミ」は上記したショットをモノにする為に活動するスタッフへの礼賛としても機能する。素晴らしい。撮影所映画としても
「カツベン」辺りと比較したら愉しいかも?

4 おらおらでひとりいぐも
(沖田修一監督)
正直、これに関してはあんまり言葉にするパワーがないのだけれども「独りで生きていく」ことをここまで丹念に撮っている映画はこれだけだったのでは?
冒頭の田中裕子が座敷空間の広がりに合わせて踊り狂う様を室内〜室外から撮ったショットの温度差に思わず身震いした。
そして、墓参りのシーンよ。
あそこでフレームインしてくる掌には思わず落雷してしまったわ。
俺達は、みんないつか独りになる。
それでも、何かが背を押してくれるのだとしたら・・・と日常の合間に時々考えることをそのまま映像にしたようなショットだった。

5 ランボー ラストブラッド
(エイドリアン・グランバー監督)
これ、アクション&リベンジ映画としてはかなりの奇形で、娘(実子ではない辺りも無駄に複雑)を連れ戻しにいった先ですぐ決着が付くような映画にはなっていない。
故に混乱した後味が強く残る作品なのだけれども、
地獄を再現したような穴蔵空間にひたすらダブル・タップの悲鳴が響き渡る様はどうしたって鮮烈だし、身内を家から立ち去らせてから急ピッチで
処刑ステージを用意する編集のリズム、特にペンで地図に印を付ける動作の異様な速さには戦慄した。
アクション映画なのにゴアホラーで、シレっと揺り椅子に座るだけで「俺、西部劇なんだよね」と映画史に居座ろうとする豪胆さ。
ランボー、いやスタローン!あんた何者だよ!

以下、後編に続く!